ミトコンドリアとは


生物の授業で習ったことのあるように、
ミトコンドリアとはほぼ全ての真核細胞にある細胞小器官である。
2重膜で出来ていて、細胞内で分裂・増殖し、

独自のDNAを持っていて、これは細胞核と違い輪ゴムのような形をしている。
そして一部のタンパク質を自前で合成し
まるで細胞内で細菌であるかのように振る舞っている。

ミトコンドリアは、細胞内でこのようにエネルギーの合成をおこなっている。
簡単に言えば、酸素をつかって炭水化物を分解し、そのエネルギーを細胞内で
使えるATPという形にしている。

ミトコンドリアは細胞内で細菌のように見えるといったが、
実際、昔真核細胞生物に入り込んだある種の細菌がその先祖であると考えられている。
ミトコンドリアの祖先であるその細菌は、現在のその機能と同じく、
酸素を使ってエネルギーを作り出していた。この方法は、酸素を使わない場合に比べ、
20倍近い効率でエネルギーを作り出すことが出来る。その細菌(αプロテオ細菌とよばれている)
を酸素をつかうことの出来ない真核細胞生物が細胞質の中に取り込み、共生をはじめたのである。

その細菌を取り込んだ真核細胞生物、つまり宿主細胞はその共生を始めた初期に
そのミトコンドリアの先祖から、DNAの大部分を奪い、自らの核内DNAへと
情報をうつしかえたようだ。そしてミトコンドリアがふたたび外へと出て
生きてゆくことの出来ないようにした。
今ではミトコンドリアは細菌だった時代の1割ていどのDNAしかもっていないようだ。


さて、これはトンボの羽を動かす筋肉の電子顕微鏡写真です。
ちょっとわかりにくいが、巨大なミトコンドリアがびっしりと並んでいる。
トンボは1秒に何十回と羽を動かしてスムーズに飛ぶ。
それに必要な膨大なエネルギーは、このたくさんのミトコンドリアが作り出す、
大量のATPによって提供されているのだ。


このようにミトコンドリアを持った生物は、その効率の良いエネルギー供給のおかげであろう、
様々な進化をとげ、地球上にあらゆる形で広がっていった。
動物、植物はもちろん、菌類まで、現在地球上で見かけられる生物のほとんどすべてが
ミトコンドリアを持っている。


見方を変えれば、地球上でもっとも繁栄しているのはミトコンドリアともいえるのだ。

ヒトは60兆個の細胞で形作られている。それらの各細胞に約2000個の
ミトコンドリアがふくまれている。つまり、
ヒトひとりは12京個(1.2×10の17乗個)のミトコンドリアをもっていることになる。
地球上にはヒトだけで60億人。人類だけでこんな数のミトコンドリアだ。
生物のほとんどすべてがミトコンドリアを持っていることを考えると、
ミトコンドリアの遺伝子は地球上に最も多く存在する遺伝子だとも言えるのではないか。

ちなみに
ミトコンドリアを持つ宿主細胞はミトコンドリアが自分に刃向かうことのないよう、対策もしているようである。

まず、宿主細胞は、ミトコンドリアの分裂をコントロールできるようにしている。
核内の遺伝子から作られるタンパク質で、ミトコンドリアを強制的に分裂
させているようだ。

また、有性生殖を行う生物のほとんどでは、母親由来のミトコンドリアだけが
子供へ伝わるようになっている。これをミトコンドリアの母性遺伝という。
このことで、違う種類のミトコンドリアDNAが混ざり合い、多様性を持って、
進化をとげることを妨げているのではないか。

このようにミトコンドリアは細胞核に大きく支配されているようだ。
つまり、ミトコンドリアは細胞内で、奴隷のように扱われている
と考えられる。よって映画「パラサイト・イブ」が現実化することは、おそらくないとおもわれる。