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第28回「養殖漁業に吹く世界化の風」 (97/11/20)

 エビ好きの国民として知られ、年間に1人3キロ半も食べ、海外各地で養殖させて大量輸入を欲しいままにしてきた日本だが、これからはそうはいかなくなるかもしれない。「エビの相場」によると、冷凍エビの国際市況が強含みで推移し、輸入の主力、インド産のブラックタイガーは10月には安値だった8月より3割も上昇した。不景気で消費意欲のぱっとしない国内に引き換え、経済発展の著しい中国や、好況で懐具合の良い米国からの買いが入っているという。一方で、排他的200カイリ専管水域の設定などを柱にした国連海洋条約が発効して、世界全体で水産資源の獲り放題が許されなくなった。海洋の汚染や天然資源の枯渇もあって、10年余りのうちに世界で出回る魚の40%は養殖魚になるとの予測さえある。

◆我々はどんなエビを食べているのか
 物価の優等生と言われるものに、卵と並んでエビがある。「海老よもやま話」が、それを支えた過去20年余りの海外エビ産地の盛衰を伝えてくれる。「20数年前は、中国がわが国の海老の輸入相手国のナンバー1だった。当時は天然の海老がほとんどで、渤海湾の大正海老が中国からわが国に輸入されていた。海老業界では中国大正と呼ばれている。この頃は養殖海老は、国産の車海老しかなかった。ところが、15年ほど前に、台湾で通称ブラックタイガーと呼ばれる車海老の仲間が養殖されるようになり、爆発的に生産量が増えた。一時、台湾がわが国の海老輸入国相手国のナンバー1になった。あの小さな国の台湾が、養殖のおかげで世界で有数の海老の生産国になったのだ。ところが、海老のウイルス病による病死で、台湾の海老養殖は幕を閉じた。高密度養殖による養殖池の汚染が原因と言われている。養殖池の老朽化とも言われている」

 こうして始まったエビの大量養殖は、各地の養殖池を使いつぶす形でまず台湾からタイへ、さらにマレーシア、インド、インドネシア、フィリピン、ベトナムなどへと広がっていった。東南アジアの水辺に多いマングローブの林がエビ養殖のために大規模に破壊され、エビ養殖が去った後、生態系を立て直すためにマングローブ再生が試みられたりしている。

 今ではエビ市場の4割はブラックタイガーが占めるようになった。クルマエビ類については「海老の種類」を参照していただきたい。そのほかにも100種類くらいのエビが輸入されている。それにしても、かつて最大のエビ輸入相手国だった中国と、国際市場でエビを取り合う時代が来るとは。

 大量養殖は、「姿のイセエビ、味のクルマエビ」と珍重されたクルマエビの大衆化を目指して始まったのだが、海外と国内でのエビ養殖はその様子が違う。「クルマエビ」に「日本では活き作りのクルマエビは、その優雅な色彩と甘美な味わいのゆえに、古来海の幸のうちでも最高級の料理の一つに数えられてきた。したがって日本でエビ養殖といえばクルマエビの養殖に限られ、必ず活きエビとして出荷され、料亭やホテルなどで豪華な料理として提供され、品質においても養殖ものが天然ものに比べて勝るとも劣らぬほど高く評価されている。一方、今日海外で養殖されているクルマエビ類は多種に及んでいるが、一部の国で海鮮料理用に水槽に活かして鮮度を売り物に提供されている以外、大部分は発展途上国から冷凍エビとして日本、アメリカ合衆国、ヨーロッパ諸国などに大量に輸出され、一般家庭向けに冷凍エビとして惣菜用に安価に売られているほか、業務用としても大量に消費されている」「これらの冷凍エビは、日本で養殖した活きクルマエビとは消費形態が異なり、両者間には原則として市場での競合はない。海外のクルマエビ類の養殖に比べると、わが国のクルマエビ養殖の経営規模は極めて小さい。しかし、活きクルマエビは、舌が肥えて味に独特のグルメ市場向けの商品であり、美味で華麗な銘柄物を作る繊細な名人芸が評価されるような商品である。海外のエビ養殖が一般向けの冷凍食品を作っているのとは目標の高さが違う」

 水産物の養殖物といえば、淡水のアユにしても海産の代表ハマチ類にしても、身のしまった天然物のほうが、エサの食べすぎでこってりした養殖物より美味と相場は決まっている。なぜ、クルマエビだけは違うのか。「エビについてのよくある質問」に、「その秘密は、体に含まれる脂肪分にあります。魚などは脂肪からくる匂いがあり、匂いは味覚に大きく影響を及ぼします。魚や肉類のような飼料に由来する脂肪臭が天然の餌を食べているものとはちがいますので、匂いで味を区別することができます。しかし、エビには脂質はわずかしか含まれておらず、エビの味はタンパク質を構成するアミノ酸に由来し、体のタンパク質を構成するアミノ酸組成は、天然も養殖も同じですから、味は変わりません」と、その答があった。

◆陸上養殖への動き
 そのクルマエビを陸上で養殖してしまう会社が現れた。「海水無交換、クルマエビ陸上養殖」に「陸上で、海水を全く交換しない陸上養殖システムが開発され、神戸市の農耕地でクルマエビ養殖が行われている。このシステムは直径500ミリパイプの中に多孔質砂を入れ、クルマエビの糞尿などが貯まらないように水を常に循環させると言うもの。大量の海水を使用しないため、海から遠く離れた休耕地や、ビルの屋上でも可能な養殖方法が確立された」と紹介されている。

このぺージは”団藤保晴の「インターネットで読み解く!」”より引用させていただきました。