2年3組安全班



「難民と食事(安全班)」

 



1.はじめに…

このレポートは、総合家庭科課題「難民と食事」に関するレポートである。なお、クラス内での研究内容分担に基づいて、このレポートでは主に難民と食事の中でも「安全」をテーマとして研究を行った。
はじめに、この「難民と食事(+安全)」という抽象的テーマを扱うにあたって、このレポートの内容的な流れを明確化させておきたい。抽象的テーマをあつかうには、その指針をなるだけ明確に打ち出しておくことが必要不可欠だからである。このレポートの内容的流れは以下に示すとおりである。

  言葉の定義確認 → 現況把握 → (KeyWord="安全") → 今後の展望

 難民について、ここで全てを述べることはとてもできないので、このレポートでは一地域の難民に限定して論を展開している。その点はご了承願いたい。



2.本論篇

(1) 難民とは…

まず、このレポートを始めるに当たって「難民」とは何たるかを理解するのは必然的に要される作業であろう。ちなみに、難民の辞書的定義は以下のようになっている。

【難民】

英語のrefuge(レヒュジー)は避難民とも亡命者とも訳されるが、我が国は1951年の「refugeesの地位に関する条約」に81年に加入する際、出入国管理及び難民認定法を制定した。一般に難民とは、戦争や政治的宗教的迫害などの危険を逃れるために、住んでいた土地を離れざるを得なかった人のことで、自らの意思で求めた危険によって追われる政治犯とは異なり、自分の意思とは無関係なところから生まれる危険によって追われる人である。よって、本質上、難民は大量発生を特徴とする。51年の難民条約と66年の難民議定書は、これらの難民に一定の保護を与えるものである。一般に国家には難民保護の法的義務はないが、少なくとも難民を迫害の待つところに追放したり送還してはならない。これをノン・ルフールマン原則という。条約上、難民は、人種、宗教もしくは特定の社会的集団の構成員といえる。

 上記の通り、内容は非常に抽象的である。そこで、今回はこの辞書的定義に沿った難民として一地域に絞って例を挙げてみることとする。

(2) このレポートで研究対象とする難民紹介

難民、ときいてイメージする地域は人によりけりである。我々の班で「難民」のいる地域をイメージしてもらったところ、ソマリアやベトナム、ケニアなど様々な地域が挙げられた。難民について研究するのであれば、どこの難民でも同じかも知れないが、この班は「安全」がテーマである。安全をテーマとする限り、やはり安全面で一番問題のある地域を選ぶのが妥当であろう、ということになり、様々な地域のデータを収集し、どの地域が最も安全面で問題があるか比較検討してみた。その資料は次頁に示すとおりである。
なお、次のグラフに関しては、「国々の前進(1998年度版)」から制作されたものである。
 右図は、難民の多くいる地域における安全な水、および衛生施設の普及率を国別にグラフ化したものである。
どの地域も決して高いという数値ではないが、中でもとりわけ目立って低い数値を示す国がある。エチオピアである。エチオピアの安全な水の普及率はわずかに25%であり、グラフ中の国全15カ国のうち最低の数値を示している。また、衛生施設(トイレなど)の普及率も19%であり、これも全15カ国中14位の数値である。右記両グラフを併せて考えてみると、エチオピアが最も安全に問題のある地域と言うことができよう。                                        
したがって、このレポートで、安全に対する対策が危急に要される国、エチオピアの難民について研究していくことになる。

(3) エチオピア難民に関する詳細記述

エチオピアの難民は、ソマリアの難民と統合され、「ソマリア・エチオピア難民」と定義されている。現在、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)が正式に認定したソマリアエチオピア難民の数は、3キャンプ地の総計で21555人である。しかし、実際にはキャンプ地におらず、ジブチなどの他国へ流出している人々も多くおり、本来の難民の総数は上記した数よりも多いことが予想されている。

(4) AMDA(ソマリア・エチオピア難民援助プロジェクト)が行っているエチオピア難民に対する「安全対策」

我々は、エチオピア難民について研究して行くにあたり、ソマリア・エチオピア難民の援助を目的とした組織が存在することを知った。その組織の名はAMDA(アジア医師連絡協議会)。それほど大きな組織ではないようだが、主に難民の安全対策をボランティア的に行っており、組織の分類としてはNGO(=非政府組織)の部類に属する。この項目では、AMDAがエチオピア地域で実行しているソマリア・エチオピア難民援助プロジェクトについて、その一端を紹介してみようと思う。

 (α)診療について

 (β)薬局管理について

 (γ)補助栄養プログラム

  
項目(3)(4)に関する以上の記述は、AMDA(アジア医師連絡協議会)のホームページの一篇
  http://www.amda.co.jp/contents/journal/jnournal2/project2-4.html
を参考にしたものである。
 

(5)「安全の定義」  〜 「死なない」=「安全」の極論的定義 〜

 今までは難民の定義、およびその一例としてのエチオピア難民の実態報告、さらにその難民に対して行われている援助の実状を報告してきた。一歩間違えれば死が待ち受けている難民の厳しい実状と、それをぎりぎりの線でくい止めようとするAMDAの活動が理解できれば幸いである。
 さて、このレポートの本題は何であったか…。そう、「難民と食事(安全篇)」である。難民の実態をふまえたうえで、その食事の安全性について検討していくのがこのレポートの趣旨である。しかし、この「安全」という語も非常に広い意味を持っている。たとえば、我々日本人に取ってみれば、賞味期限が1日過ぎたものでも、それは「危険=安全でない」となってしまうのである。だが、生と死の狭間で生きている難民に取ってみれば、そんな賞味期限の話など気にもとめないであろう。人々のおかれている状況によって、「安全」という語の定義は異なるのである。したがって、ここで、このレポートにおける「安全」の定義を行う必要性が生じたのである。
 このレポートにおける「安全」の定義。生と死の狭間で生きているような難民にとって、彼らの立場に立った極論を言ってしまえば、「安全」とは「死なないレベル」をさしているのである。どんな食べ物であろうと、食べて死なないものであれば食べ、もし食べないなら生きることすら危うくなるのが難民である。また、現実問題として、食事の安全性の欠如によって死亡する難民も相当数にのぼるのである。このような難民たちにとって賞味期限がどう、食品添加物がどうとかいう話とは全く類を異にするのは自明であろう。
    「安全」=「死なないレベル」 このように定義してこれからの論を進めていこうと思う。

(6) 「安全」の重要性  〜 「安全」の欠如による難民の死亡者数から検討する 〜

 右図は、開発途上国の5歳児未満の子供の死因をグラフ化したものある。みての通り、様々な要因が混在しているが、実はこれらの死因の内、55%は栄養不良関連の死なのである。開発途上国の5歳未満児の年間死亡者数は1200万人であるから、660万人もの子ども達が栄養不良のために命を落としている試算になるのである。
 開発途上国の子どもたちは、3人に1人が栄養不良である。栄養不良は目には見えにくいものの、軽症のものでもこどもの病気による死の危険を2倍にし、さらに中程度の栄養不良では死の危険性は3倍にもなるのである。
 栄養不良、という語をくわしく分析していくと、ビタミンAや鉄分、ヨードなどの栄養素が不足しているといえる。ビタミンAを十分とれない子どもは、失明の危険があり、また、はしかやマラリアなどの病気に対する抵抗力も弱いのである。また、鉄分の不足による貧血症はこどもの筋肉運動や精神運動の機能の発達を遅らせており、これらの原因によって多くの子ども達が命を失っているのである。
 
 この結果より、前項目で決められた「安全」=「死なないレベル」の極論的定義にてらしあわしてみても、安全の重要性は非常に高いものと言える。死なないレベルの安全性を確保するだけで、年間660万人もの子ども達が助かるのである。いかに、「安全」に対する取り組みが早急に必要とされているかわかるであろう。



3.総まとめ 〜 安全をキーワードに「難民と食事」を語る〜

(1)「安全」がもたらす恩恵

難民の定義に始まり、実態報告、食料の安全に対する取り組み紹介、安全の定義、その重要性記述と行われてきたこのレポートであるが、ここで「難民と食事」を安全の面から分析するために必要な事項は全て終了したといえる。従って、この項目からは今まで述べてきたことをまとめる結論篇として論を展開していこうと思う。
「安全」という語をキーワードにして「難民と食事」を語るとき、一番重要なのは「開発途上国の子どもたちの栄養改善」である、ということは先にのべた通りである。そうすることにより、何百万人という大勢の尊い命が救えるからである。
ただ、この「栄養の改善」すなわち「安全」がもたらす恩恵は、なにも単純に命が守れる、ということだけではないのである。次をご覧頂きたい。

 
 子供の栄養を改善することは、貧困の緩和、経済の成長にまでつながっているのである。先進国は、開発途上国に対して、工業の発展を促すためには何兆円もの資金をつぎこんでいるのに、この子ども達の栄養改善のためにはあまり資金を出していないのが実状である。そのことは、2万人以上もいるソマリア・エチオピア難民の栄養管理をわずか14人(7人/team×2team)で行っているAMDA ソマリア・エチオピア難民援助プロジェクトの活動内容を見ても明らかであろう。 

(2)今後の展望

 難民と食事の安全に関する最大の課題である「栄養改善」、この作業は金がいるのはもちろんのこと、それ以上に人手がかかる作業である。AMDAのようにボランティア的に行う人達はあくまで少数であり、難民キャンプ等の現場では、薬が送られてきても管理する人の不足などの理由で廃棄せざるを得ない状況さえ起こっている有様である。(AMDAの話)
 このような状態を打開するにはどうしたらよいのであろうか…。それには、やはり先進国の援助が必要であろう。ただ、先進国が国レベルで援助を行うと、どうしても「技術協力」や「工場建設」といった大がかりなプロジェクトになってしまい、難民などの人々は、なかなか恩恵をうけないのである。そのために、我々は国がNGO(=非政府組織)に対して資金協力を行うことを提案する。NGOは、民間の手によって作られた組織で、実際に現地の人々の所へ行き、草の根レベルで援助を行っているのである。ただ、国の援助がないために、資金繰りに困っており、ここで国が援助し、「大規模レベルでの援助=国同士がODA(政府開発援助)などで行う」「草の根レベルでの援助=NGOが政府の資金協力を得て円滑に行う」というように明確な役割分担が行われれば、開発途上国の子ども達の栄養問題も必ず改善できることであろう。

以上


<参考文献>
ユニセフ発行「ユニセフ活動の手引き(1998年度版)」
AMDAのホームページなど



 吉野直樹 浅野雄亮 家倉寛人 隈部智晴 谷口直矢 
                 長坂卓哉 福島哲平 金崎八重 高田 穣