食の不思議 ――― 享楽型と禁欲型 ―――

2年1組 越 智 香 予



はじめに

 レポートの目的は、食を通じて自文化・他文化を考えることである。今年の夏、イギリスホームステイを2週間であるが体験してきた。そこで、これまでの自分の食に対する姿勢とイギリス人の姿勢に大きな違いが存在することを認識した。その大きな2つの違いは、互いの文化にも関わっている。幾つかの資料を参考にしながらテーマを追求・整理していきたいと思う。



イギリスと日本での相違

 イギリスと日本のスーパーマーケットの違いは、イギリスではジャンクフードつまり高カロリーの食品が、はるかに多かったということである。チョコレート・アイスクリームの種類の多さは、見ているだけで満腹になるという感じだった。正直に告白すると、イギリスでの生活で最も心配していたことは、太ってしまうのではないだろうかということだった。街中で見かける人々も体格のどっしりした、いわゆる小太りのタイプが明らかにイギリスの方が多かった。ホストファミリーの家での食事も、量がハンパではなく、お菓子も好きなときに、好きなだけ食べるという状態で、さらにホストマザーの作る料理は、どれもこれも絶品だった。ホームステイ2日目の夜、私は初めて『食べすぎるな、太るぞお』と言い聞かせている自分に疑問をもった。イギリスの私と同じ世代の子供達は、こんなに食事を楽しんでいるのに、私はどうだろう。



具体化して追求

 帰国後に知ったことであるが、食には"享楽型"と"禁欲型"があるという。食欲を満たすことには、生理的な快感がともなう。その快感を増幅し、本能のおもむくままに食を楽しむのが前者。一方で、本能的な欲望を抑えることによって人は人らしく生きれるのだという立場が後者。このような(後者)人々に対しては、食事は他の価値観を実現するための人生を維持する手段にしかすぎないのだ。つまり、私の場合、食に対する考え方が、"禁欲型"の傾向であったということだと思う。そして言うまでもなく、食するという欲望にとても素直だったイギリスでであった人々は"享楽型"だったのだろう。



日本国内での推移

 ここで非常に興味深い資料を見つけたので紹介しておきたい。

体型
伝統的評価
変化
現在の評価
デブの人
好ましくない体型

好ましくない体型
小肥りの人
好ましい体型

好ましくない体型
ふつうの人
ふつうの体型

好ましい体型
やせた人
好ましくない体型

好ましい体型

体型
連想される属性
小肥りの人
好ましい体型
健康

富裕
寛大
やせた人
好ましくない体型
不健康

貧困
冷酷

 2つの表は日本人の抱いてきた伝統的観念をよく表しているものである。歴史的には、小肥りの人は、健康的で美しい体であり、食に満ち足りた富裕な上流階級で寛大さを象徴する好ましい体型と評価されていたのに対し、やせた人はマイナス評価の対象とされていた。現代の日本では、女性だけでなく男性までも「食べる」ということに対して禁欲的傾向が強い。それは、世界中と比較しても、日本人の中で「優」とみなされる体型が、細いトップクラスに属していることは間違いない。



食の不思議

 "享楽型"と"禁欲型"。どうしてこのような差が生じているのだろう。確かに、食に対して禁欲的である方が、生活習慣病などにかかりにくくなり、健康とも言える。一つはそのような理由で、禁欲が生まれたのだろう。しかし、もう一つ宗教的な背景も深く関わっているのだ。世界中が食に対して享楽型だったのに対し、仏教といわれる聖は、禁欲であるべきとされていた。ある説によると、国内で、宗教的精神が一般にも行きわたり現代に、食に関する"禁欲"いたるとも言われている。いずれにせよ、イギリス人の家庭の中で私が感じた食に関する違いは、このような2つのタイプが存在し、どちらの傾向が強いかということで説明ができるということだった。



あとがき

 さて、ホームステイの3日目からのことだ。私は、もはや、食べることに関して、自分を抑えることはやめた。彼らと同じように心から食事を楽しみ、食べるものに感謝するということが、また、彼らの文化を学ぶことになるはずだと考えたからだ。今、日本にいてやはり、"禁欲型"の方が正しい道だと思っているが、それにとらわれすぎて、食事を楽しめなくなるというのも、食べ物に失礼な気がする。私はうまく2つを調整して生きていこうと思った。