食の不思議

―――「偏見」と「ゲテモノ」―――

2年3組 島 佳 伸



 世界には、ゲテモノと呼ばれるような食べ物がたくさんある。中東では羊の目玉やハトの丸焼きを食べるし,メキシコではグサノという芋虫を珍重する。日本のクサヤだってゲテモノの域に入るだろう。
 しかし,考えてみると,ゲテモノであるかないかという基準は,その人の育った,もしくは暮らしている地域の食の文化によるものが大きいようだ。イギリスのチャールズ皇太子が世界旅行をしたとき,後の記者会見でこんなことを言ったそうだ。
 「どうにも食べられなかったものが二つある。一つはサウジアラビアで出された羊の目玉で,もう一つは日本のイカの刺身である」羊の目玉は,冒頭で僕もゲテモノの例として挙げていたが,向こうの地域では最高のご馳走の一つだそうだ。きっとサウジの人間が羊の目玉を食べられなければ,彼は好き嫌いのひどい人間,もっと言えば偏食と見なされるかも知れない。
 イカの刺身にしても,日本人である僕は大好きだが,あの半透明のネチネチとした身が,おそらく生まれて初めて生でイカを口にしたであろう皇太子にとっては耐えられなかったのだろう。つまり、日本人にとってはごく当たり前の食べ物であるイカの刺身が、イギリス人にとってはまぎれもないゲテモノとしてみられたわけである。
 昔、「おいしんぼ」という漫画の中で、トンカツをオムレツとハンバーグでしか食べることができない、極度な偏食の人間の話を読んだことがある。どもの頃からその3つの食べ物ばかりを食べてきたので、今ではそれ以外の食べ物を口にすると吐き下してしまう、というのだ。たかが漫画の話,と思っていたら,実はこれは作者が実際に会ったことのある人物をモデルにした実在する話なのだそうだ。
 偏食とは食べることのできる食品の範囲がせまいことだ。そして,人間は自分の食べることのできる範囲外の食品をゲテモノと呼ぶ。となると,トンカツとオムレツとハンバーグしか食べることのできない彼にとっては,それ以外の食べ物はすべてゲテモノということになってしまう。さびしい人生だなあと思えてならない。
 今のはちょっと極端な話だったか、とにかくチャールズ皇太子が羊の目玉とイカをゲテモノと見なしたのは、彼が育ってきた環境の中の食の文化に、羊の目玉とイカが組み込まれていなかったからである。ヨーロッパの食の文化は,パスタやシチュウーなど数々の素晴らしい料理を生み出してきた。しかし,こういった文化の形成は,逆に,羊の目玉やイカを食べるという別の文化を締め出してしまうことにもなると思う。
 しかし,他の文化を理解することも大事なことだ。ゲテモノだと思っていた物が、食べてみると結構行ける,なんてことはよくある話だ。世界にはおいしいものがたくさあんあり,数々の食の文化が存在する。少なくとも、トンカツとオムレツとハンバーグ以外はゲテモノだというような人間には、あまりなりたくないものである。


あとがき

 本文にも書いたが僕は「美味しんぼ」という漫画をよく読む。もう60巻以上刊行されているが,食をテーマによくこれだけ描けるなと思う。それだけ日本人の食に対する関心は高いとも言えるだろう。
 「食べる」という行為は本来,栄養分を体内に取りいれることによって生命を維持するためのものだった。しかし,人間は,食べるという行為を文化にまで発展させてきたのだ。
 今夜の夕食は,僕の大好きなすき焼きである。すき焼きという偉大な料理をつくり出した日本の食の文化と,その文化を形づくってきた我々の祖先に敬意を表して,このレポートを終わりたい。