おでんの小野の店長さんに聞く

2年2組2班(馬戸・大橋・河嶋・今田・小川・萱室)
インタビューワー:小川 恵



Q.
まず始めに、このお仕事を始められたきっかけは何ですか。
料理長
僕はこの仕事が好きで、それで父親も母親もこういう仕事をしていて、しんどい思いをしていたのでちょっとでも手伝ってやりたいと思ったのが第一の理由でべつに親孝行をしようとかではなくて、助けてやりたいっていうそれだけの気持ちで始めましたけどねぇ。
Q.
仕事を始められていろいろ苦労されたこととかあると思いますが、そういうことでお話していただけることとかありましたら、例えばこういうお客さんが来て困ったとか。
料理長
よそで飲んで、もうだいぶ酔っ払っちゃってから僕の店に来て、大きな声を出して騒ぐお客さんは嫌ですね。それとか、周りのお客さんに迷惑をかける人も嫌ですね。それ以外は嫌なお客さんとかはいないねぇ。だいたい好きな人が多いんで。ただ、この仕事の苦労っていうのは、まず皿洗いから始まって、それを"おいまわし"って言うんだけどね、それを1年くらいやって、野菜を切らしてもらったりして、それから、煮方とか焼き方とか料理のほうに入っていって、最終的に、立て板くらいになるまでの苦労っていうのはすごい大変やな。
Q.
私も、実は中学校を卒業して、料理の専門学校にいこうかと思って悩んでた時もあって、その時に、"料理の世界は大変やで"って言われたんですけど。
料理長
そうそう、日本料理は得に大変。今のフランス料理とかイタリア料理とかは少なくなったけど、日本料理っていうのは縦の社会がすごく残っているんだよね。そういう面では大変やね。そうですね、どんな職業でも縦の社会っていうのはすごく大変ですよね。ほかにも、この店をやる前に、北新地に2カ所、ナビオ阪急で2カ所、全部で4カ所店をしてた時に、従業人を全部で150人使っていたんだけど、その人たちを使うのも大変。まあ、でも、常時いるのは50人くらいなんだけど、その中にも、バイトの子とかいて、その子達も毎日来れるわけじゃないから、曜日の割り当てとか、給料のこととか考えたりするのも大変だよね。ただ料理を作っている人がたくさんいるんだけど、それを僕が嫌がったから、僕が料理を全部作って、なおかつ自分で商売がしたいと思って店を大きくしたんだけど、結局、病気になってしまってその4件の店を手放さなくてはいけなくなって、今はこの小さな店でがんばっているんだけどね。まぁ、人間は浮き沈みがたくさんあると思うんだけど、料理の世界の浮き沈みっていうのは、得に今一番沈んでるときだと思うんだけど、まず外食っていうのは最近少なくなってきて、この中でやっていけるのはがんばれる体力のあるとこだけだと思っているから、そういう面では大変な商売だね。この店に来てすごいうれしかったのは、まったく味の素を使っていないっていうことなんですよ。
Q.
でも、なんでこのように始められようと思ったんですか。
料理長
それは、本当の旨味を出す技術を身に付けてるから、そういう味の素とかは必要ないんだよね。かつおや昆布をちゃんとしたものを使えば味の素を入れる必要はないから、おいしい料理は味の素が入ってる料理ではなくて、素材の味をいかした料理である、これは間違いのない事だと思っているから。これを実行しているだけで、なぜって言われても、ただ僕が味の素が嫌いだから、ごまかすのが嫌いだから。おいしいものはおいしく食べてもらいたい、っていうのがあるから、その中で研究に研究を重ねたのがおでんの味であったり、ドレッシングの味であったり、いろんなものの味であったりするんだよね。
Q.
それと、自然食のお店っていったらたいがい高いんですけど、その中で定食が700円っていうのはすごくうれしいんですけど、なぜこのように安くできるんですか。
料理長
それはね、僕とこの仕入先が、兵庫県の三田市の愛野っていうとこで僕の叔母ちゃんにあたる人がやってる農園から毎週月曜日と木曜日に送ってもらうことにしてて、そうしたら仲買がいないから安いやろ。魚は淡路島から神戸のほうに運んできてて、そこの神戸の中央市場で僕の弟子が手伝いながら仕入れをしてきてくれるから、漁師さんから直接仕入れることができるから安く出せる。
Q.
そうですね、仲買業者とかにまかせっきりだったらダメですよね。
料理長
そうやね、自分で見たり、自分の信用のおける人にお願いしたりというのが一番ベストじゃないかな。僕が思うのは池田市においしい店がないってよく言われるけど、確かにその通りかもしれない、でもその中でも、1軒2軒っていうのは必ずおいしい店があるはずで、そういう店は手を抜いていない。手を抜いていない料理屋さんっていうのは必ずおいしいはず。仕入れでも仕込でも掃除でも料理を作るときでも、全てのことにおいてきっちりしておかないと、せっかくおいしい料理を出しても、それを認めてもらえないから一所懸命やってるかな。お客さんがいないときだったら床を拭くとか、グラスをもう一回みがきなおすとか、忙しいときはそのグラスを出してお客さんに喜んでもらう、こういう日頃の心構えも必要だと考えて教育してるんだけどね。何事にも手を抜かない、何事も雑にしないでお客さんに喜ばれるよう努力して、より多くのお客さんにいいといってもらえるようにしようと思って毎日頑張ってるし、そのためには毎日包丁を研いで、掃除をして清潔にしておかないとお客さんが来てくれないやろ。だから、そういう面では一生懸命やってるんですよ。で、食の職っていうのは食べ物に関する職業ってどういうものかっていうこと。
Q.
そうですね、人間として一番基本的な"食べる"ということに関わる職業の人にいろいろ聞いてみようと言うものなんですけど。
料理長
ここの弟子でもあるんやけど、僕はパ−トナ−と読んでるんだけど、共に頑張ってくれてる子と二人で、頑張ろうなあ、今以上に大きな店を出そう、それでより多くのお客さんに喜んでもらおう、そのためにも、信頼のおけるパ−トナ−を増やしていくのも一つの仕事やといって、人間関係を大切にして、一つの仕事に打ち込む、その時に食の職として一番大事なのは、野菜などと友達になる、そうしてそいつに声をかけてやることで料理がおいしくなる。なぜかっていうと心がはいるから。うちの店はだしが命やから、昆布のつける時間、かつおの上げる時間はその日の天気や温度によって変わるから、そういうものに関して決まったものはない。それと、例えば、たったひとつまみの塩を大きな鍋に入れても味が全部変わってしまう、だからちょっとしたことで違ってくるからそこは大事にしている。基本形はあるけど、それが毎日100%のものができるかっていうと、80%ぐらいはできても100%はなかなか難しい、だから、それを100%に近づける為に、毎日が勉強みたいやね。それを経験して、日記を書いて大事にしている。一つの料理を考えるときも、いろんな形で、いろんなソ−スを使ってみて、いろいろなメ−カ−の酢とか塩を使ってみたりしてその料理に一番合うものをもってくる。後は、自分の舌と感性と間違ってるとか正しいとか意見を言ってくれるパ−トナ−のこの3つがおいしいといったらまあ間違いがないから、しっかりと意見を言ってくれるパ−トナ−がすごく大事になってくるよね。そして、いろいろ話し合ったりしてみんながおいしいと言った時に初めて一つのものができて、今度は、それをべ−スにしてもっと手を加えられないかと毎日考える。これが好きじゃないとやっていけへんよな。それにこんな小さなとこで僕と2人のパ−トナ−で調理、掃除、経理とかすべてやらなくちゃいけないのが大変やねえ。料理だけでなく、ほかの世界の職人の人もそうだけど、職人だけやっていれば楽やけど、それを経営するとなるとほんとに大変やね。外国のほうでは、オ−ナ−シェフって言うんだけど、僕らで言うたら、料理長だけはなくて、オ−ナ−でありながら料理を作る人間って言うのは、人を育てないといけないっていう、人材の育成って言うのは大変やね。人を育てるっていうのは、人の人生をあずかってるわけやから。それと、僕には家内も子供もいるけど、やっぱり家庭があってそれから料理があるていうかんじやね。ほかにも、弟子が店を出すときは、味を教えたり、チェックしにいったりするときもある。その時は、オ−プンして3日くらいはそこで手伝いをしたりしてる。あと、知り合いの人のホテルに料理の講習会をしにいったり、なかなか大変やね。
Q.
そうですか、自分のお店のことだけじゃないんですね。
料理長
僕の場合はね。僕は昔、北新地とナビオ阪急で店をやってたでしょ、それでこの世界ではうるさいほうやったらしいんだけど、そういうことで、いまでもいろいろと声をかけてくれたりするんだけど、まあでも僕が人に使われるのが嫌いやからね、人を使うのも嫌だけど、だから断ってるんだけどね。
Q.
まさかそういう人がこのような小さな店をやってるとは思ってもいませんでした。ずっとここで店をやってるのかなと思ってました。
料理長
ここに来たのは2年半前で、病気になってからやからね、ただ家の近所だからっていう理由で選んだからね、こういう辺ぴなところにね、だからちょっとはやるまでは苦労したんだけど。でもそれ以外の苦労って言うのは、家内と二人で一緒に乗り越えてこれたからね。それで、今は弟子が来てくれてだいぶ楽になってきたんだけどね。それまでは、本当に、お金のことも大変やったから、家賃が払えないとか。今も、でも、こういう仕事は本当に安定がないからね、退職金とかもないし、指とか怪我したら大変だし、だから信じられるのは、自分の舌と腕と、自分が見て信用できるパ−トナ−だけやね。それは友達であったり、家内であったりするわけやけど。
Q.
やっぱり、人間関係っていうのはすごく大切ですよね。
料理長
そうやね、人間関係って言うのは本当に大事。お客さんとの間の関係も大事やけど、店の中でも大事やね。店がまとまっていないと、お客さんがぎごちなく感じる。すると二度とその店に行きたくなくなるから、それで僕すごく悩んで、それで病気にもなっちゃってね。病気になっちゃったらどうしようもないから、今は健康第一やね。それに、僕は、家族とか、店のものとか、お客様とかいろんな人に恵まれたから、すごい幸せやね。みんなで協力して頑張ってるからおいしい料理が出せるかも知れへんね。良い人材に恵まれてんな。弟子とかを教育するときは、自分をちょっとさげて彼らに手をさしのべる、その子らは一生懸命上ってくるからそれを助けてあげるようにする。それがこれからの職人の世界では大事なことかな。昔は勝手に覚えろ、見て覚えろ、技術なんかは師匠が寝静まってから自分で勉強しろって言う感じやったけど、今はそうじゃなくて、ある程度のとこまでは引っ張ってあげないと、それである程度のとこまで来たら、後はお互いライバルとして、良きパ−トナ−として一緒に頑張るというようになったほうがいいと思うよ。料理で一番大事なのは健康やね。健康じゃないといくら頑張っても美味しい料理はできないからね。あとは、"人との輪"って言うのは大事やね。人と人とのつながりっていう。すばらしい職人であっても、人と心のつながっていない様な職人は、僕が思う事やけど、それは職人とは言えないと思う。味だけでつながるんじゃないんだよって言うのが分かった。それが、池田に来て分かった。池田での商売って言うのは、池田の社会に入り込むまでは大変やけど、"人との輪"って言うのができたらものすごくかわいがってくれる人がたくさんいる。そういう商売は今までしたことがなかったからここに来て良かったなと思う。あと、個性って言うのも大事やね。オリジナルっていうんじゃなく自分の世界っていうの大事で、その世界を認めてもらうのも一つの料理のだし方であり、料理をしてる職人の楽しみでもあるわけから。うちは盛り付け方も、お皿も全部違うようにしてる。そうしたら楽しみがあるやろ。テ−ブルっていうのは平面やんか、その平面の上にいかに花を咲かすか、立体感をもだすかって言うのが楽しみであるんやから。それと、こういうふうに、うちの料理を食べてそれでうちの味を分かってくれた、若いもんにもわかってもらえたというのがうれしかった。本物の味をみんなに知ってもらいたいからこのインタビュ−を受けさしてもらったから。・・・やっぱり一つのことを極めていこうと思ったら一生勉強やと思う。うちの父親も、もう引退してるけど"料理は一生勉強や"といって、まだ勉強してるからね。最高のものをつくるための努力と笑顔と、そして"人との輪"、それがあれば美味しいものは作れるんじゃないかと思う。技術ももちろんやけど。でも、頑張りすぎるのはあかんね、病気しないように頑張って、病気しないように努力するのが一番やね。いや,でもやっぱり職人の「職」っていう字を見てるとね,「耳」を持たなあかんと思うね。人の話は聞かなね。
Q.
どうも今日はお忙しい中、いろいろすばらしいお話を聞かせていただいて本当にありがとうございました。